2008年6月27日金曜日

車窓

久し振りに電車に乗った。
真昼の電車。
ガラガラに空いている。
通勤用の電車なので、座席は車両の両側に長椅子が付いているタイプ。
その車両には、数人しか乗客がいなかった。
私は読みかけの本を出して開いた。
子供の声がした。
「わぁ! 海だ! でっけーー!」
顔を上げると、向かいの椅子に小さい男の子がいて、こちらに背中を向けて窓の外を眺めている。
窓の外には大阪湾が広がっている。西は明石海峡。
そんなに綺麗な海域ではないが、電車から見える海は真っ青で美しい。
ちょうど電車は断崖の上の、その私鉄で最も眺望が美しいT駅にさしかかろうとしていた。このT駅は、有名ではないが、関西の鉄道マニアの間では隠れた名所なのだ。天気が良ければ西は明石海峡大橋から東は天保山の方角までが見渡せる。
「わぁ、海だ、広いな!」
子供は叫び、私を振り返って笑いかけてきた。
私も微笑みを返し、本に戻った。
電車がT駅に入り、停車した。
軽い揺れで、私は再び顔を上げた。駅から見える海を見る、いつもの自然な行動だった。
子供はいなかった。
どこにも。
そして、私は気づいた。
子供が振り返った時、体はそのままで、首から上だけが私の方を振り返ったことを。

2008年6月9日月曜日

「四川」でのお食事 Dinner at Shisen

湯引き鯛の刺身中国風とクラゲの酢の物

Boiled sea bream sashimi with Chinese style and vinegared jellyfish.




蟹肉のスープ

Crab soup.




エビの炒め物 ガーリック風味

Fried prawns with garlic




めいた鰈の唐揚げ 甘酢味

Fried flatfish with sweet venegar.




帆立貝柱 黒胡椒とチリソース

Scallop with black pepper and hot chili pepper sauce.




青梗菜と筍の炒め物。 鰹だし風味。

Fried Qing geng cai and bamboo shoot with bonito taste. ( Japanese taste, indeed. )




ジャコ入り卵炒飯

Fried rice with egg and dried fish.




デザートです。

This is our dessert.



ブルーベリーとタピオカ入りココナッツミルク

Blueberries and Tapioca pearls in Coconut milk.

2008年5月24日土曜日

雉の写真 Pheasant

早朝、加古川の堤防へ行ってみる。いつもの風景だ。

In early morning I went to the Kakogawa River bank. It looked like as it used to be...



鳥の鳴き声が聞こえる。ギャーギャーうるさい。黒い物が見えたので、カメラを向けてみた。

I heard birds' voices which sounded noisy. There was something black in front of bush. I tried to take it with my camera.




なんか、こっちを睨んでいるヤツがおる・・・。

Something guy is looking toward me ....


をを! まさしく、雉じゃ!!

Wow ! He is a very pheasant !!



求愛の最中だったのね。

He is trying to win her love....



男は常に女を追いかける。

He always must chase her....



彼は孤独。

He must feel loneliness.



雉の夫婦。

Mr.and Mrs.Pheasants.


2008年5月21日水曜日

尾行・終わる?

バス停が近づいてきた。

 教授はボタンを押し、鞄を抱えて立ち上がった。いつも走行中に出口前に行かねば不安な質だった。
 教授を密かに慕う女子学生も腰を浮かせた。今日は先生の家の場所を確認しておきたい、と言う欲求を抑え難かったのだ。
 彼女の後を追って後先考えずにバスに乗ってしまった男子学生も、彼女が降りる気配なので、先に降りていよう、と思い立ち、教授の後を追って立ち上がった。
 教授が降りるバス停で降りる住人のふりをしている探偵も、当然のごとく立ち上がった。
 バスが減速したので、男子学生の護衛についているヤクザのベンツも減速した。

 バックミラーにベンツが映った。ちょっとそこらでは見かけないピンクのメルセデスだ。ふざけたカラーリングのボディーに、バスの運転手はびっくりした。見覚えがあったのだ。先日掛け金を踏み倒して逃げた賭博麻雀を仕切っていたヤクザだ。

 バスが急停止したので、ベンツが追突した。教授は転倒し、男子学生は座席から転がり落ちた老人を慌てて支えた。探偵は危うく手すりに頭をぶつけそうになり、女子学生は立ち上がりかけていた座席に尻餅を突いた。
 運転手は降車口のドアを開けると、一目散に走り去った。

 ちょっと大騒ぎになった。誰かが携帯電話で怒鳴り立て、怪我をしなかった乗客たちは怪我をした教授や年寄りを車外に連れだした。間もなく救急車とパトカーが来た。
 一番大怪我をしたのは、ベンツのヤクザで、教授も打撲傷を負った。男子学生がきびきびと乗客に指図したので、応急手当が女性客たちの手で素早くなされ、大事に至らなかった。
「ベンツが追突したのですか?」
 警察の質問に、探偵が答えた。
「バスが急停車して、それから後続車が追突したんですよ」
 若者はベンツの運転手が父親の会社の従業員だと証言した。彼はヤクザの意図をすぐにわかったけれど、それは言わなかった。これで彼女に近づくのは無理になってしまったな、と悟ってしまったので、ちょっと哀しかった。
 彼女は、事故を聞いて駆けつけた教授の奥さんが南方系の外国人美女だったので、がっかりした。文化人類学の教授は研究調査で知り合った現地人と結婚していたのだ。
 探偵は、教授の奥さんが、数日前に大天災で被害を被った母国の救済を訴えてテレビに出ていた女性だと気が付いた。
 教授の研究費着服は、私欲でなく、妻の祖国への救済基金に寄付されたのだろうか?
 
 混乱が静まり、各自が家に戻る頃、警察は逃亡した運転手の足取りを追跡し始めていた。

尾行5

 ちんたら走るバスの尾行やなんて・・・全くうちの親分ときたら、若のことになると親馬鹿丸出しやからなぁ・・・。
 若は、同じがっこの女の子に夢中なんや。俺は知っとる。美人やから、無理はないやろけど、あの子は若のことを知らんし、この数日弟分に調べさせたら、あの子も誰かを追いかけとるって言うやないかい。
 若、諦めんかい。ええ女やったら、なんぼでもおるって。

 あー、バスのけつ付くのって嫌なんや。排ガス、もろ浴びやないかい!なんでこんな臭い思いして、成人した若のお守りせんといかんのや。

 あー? バスのケツに何や書いとるな・・・○山×男? なにぃ?
運転手の名前やな。こ前の、賭け麻雀の支払い、踏み倒して逃げたヤツとちゃうんけ?
 おい、こら、待たんかい、こら!!

尾行4

 あの文化人類学の教授が研究費を着服している疑いがある。だが、真面目で研究一筋の男が何に金を使ったのか、わからないので、手がかりを調べて欲しい。大学側としては、事を表沙汰にしたくないので、出来るだけ穏便に解決出来る手段を考える資料として、調査結果を期待している。

 そんなことを言われて依頼を受けたのが、四日前。ずっとあの先生を尾行しているが、なんにもない。
 家と学校を往復するだけ。学校じゃ、講義に出る以外は研究室か図書館に籠もって本を読みあさっている。
 浮気も賭け事も何にもしてない。まぁ、四日だけじゃ、なんとも言えないがね。しかし、退屈だし、報告書にも書くことがない。
 困ったことに、いつも乗るバスってのが、ローカル線の極みで、乗客のメンツが全く同じ。
 違うのは、今日は若い男が一人、発車間際に乗ってきたこと。しかも、そいつ、前の席の女ばかり見ている。 あれ、ストーカーじゃないのか?
それに女も・・・毎朝毎夕見かける顔だが、教授の方をチラチラとよく見ている。
 学生か? それにしては、教授は知らん顔だが・・・。
 まさか、あの女が、貢がれている愛人ってことじゃ・・・。
 
 そんなことを思っている間に、もう停留所だ。 教授はここで降りる。俺も近所のアパートに帰るふりをして降りる。あのアパートは住人の出入りが激しくて、怪しまれないんだ。 なにしろ、ローカルだからな、人数が少ないので、つきまとうと目立つんだ。
 
 教授は降りる気配だ。 ん? 女も? やはり、逢い引きか?
 おーおー、ストーカー君も身構えている。俺も・・・。

おや? 後ろのベンツ、さっきからこのバスの後ろをぴったりと・・・追い越しもしないで付いてくる・・・。

尾行3

 どうも誰かに見られているような気がする。家と大学の行き帰り、誰かに見られている。つけられているのだろうか?
 特にそんな気が強く感じられるのは、バスの中。
 さりげなく振り返って見る。
 短い路線だ。顔ぶれは大体わかっている。

 ちょっと化粧が濃いのは、ホルモン焼き屋の奥さん。夕方、忙しくなる時間の一寸前に家に一時帰宅して子供にご飯を食べさせる。店はバス停3つ向こうだから、そんなに時間はかからない。
 くたびれた顔で外を眺める中年男二人。どちらも近所の会社員だ。不景気で残業がないので毎日定刻帰宅。奥さんが鬱陶しがっていることだろう。
 買い物帰りらしい主婦数名。大体見かける顔だ。
 終点まで乗っていく女子学生。高校生時分から同じバスによく乗り合わせている子。今は窓の外を見ている。
 彼女の後ろの席の若い男は・・・あれ? 一瞬目があって、逸らしたな。
あいつが、私を見つめていたのか? 何故だ?
そう言えば、見かけない顔だ。あぼ男が私を尾行しているのか?
 それとも・・・一番後ろの席で、俯いている、これも見かけない男。背広姿だが、ネクタイはしていない。怪しいじゃないか。
 まさかな・・・あの件が大学にばれたか?
 
 ああ、そろそろ降りる停留所だ。 降りてみればわかるだろう。 あの二人の男のどちらかが、私を盗み見していたことを。