2012年5月18日金曜日

先生、見てる?

今日のお昼、道の駅でうどんを食べてから、行きつけの美容院に電話しました。
髪が伸びていたし、白いものも目立ってきたし・・・
電話に出たのが先生の娘さんだとすぐわかりました。
彼女が何か言ったのですが、外の音がうるさくてよく聞こえません。
何回か聞き返して、聞き取れたのは、「お母さん」「死んで」「お仕事出来ますよ」「お待ちしております」

なんだろう?

店に行って見たら、店には娘さん一人だけ。
店内が気のせいかガラーンとしています。

娘さんはまるで私が何もかも知ってると思っているのか、話を始めて、その世間話の中心が彼女の母親である美容院の経営者で店長の「先生」の急逝であることを、私は間もなく気が付きました。

今月の初めに突然心筋梗塞で亡くなってしまったのです。
まだ50代半ばで、あんなに元気だったのに。
ものすごくショックでしたが、娘さんが、もう悲しみのピークが過ぎたのか、それともまだ実感が湧かないのか、楽しそうに母親の思い出を語るのを聞いていました。

娘さんはまだ20代前半で、専門学校を出てよその店で2,3年修行して今年の正月から母親の店で働き始めたところだったのです。
従業員はいません。

「暫くは何もする気力なくて、お店閉めてたんです。
そしたら、母のお客さんが次々電話かけて来て、仕事何時からや? って聞くんです。
母が死んだことを告げて、私で良かったらします、って言ったら、みなさん、『当然やん』って言うんですよ。
『髪の毛切るだけやから、あんたでええねん。』って。
それで、結構忙しくて、泣いてる暇ないんですぅ。」

彼女は母親が遺した顧客カルテを見て、どの客にどんな美容を施行するのか一所懸命勉強しているところでした。

私一人に掛かっている間にも、出入りの業者が来たり、近所の人がお母さんの関係の書類持って来たり、保険屋さんが来たり、かなり忙しそうでした。

「まだどのお客さんにどのくらいの時間をかけたら良いのかわからなくて、予約を受けても重なってしまったりして失敗ばっかりで」

と彼女は笑って言いました。

「でも、この店でないとあかん、言いはるお客さんがいてくれてるんで、私はこの店、続けよ、思います。」

だから私も言いました。

「私もこの店しか知らんから、これからもお願いしますね。」

まだ高校生にも見える新しい店長さんが笑顔で送ってくれました。

2 件のコメント:

  1. 何と言ったらいいのか、言葉が出ません。兎に角、新店長さんが強い人で良かった。また周囲の人々が彼女を支えている。心温まりました。
     人と人との絆という物ですね。

     今日、私は母の顔を見に施設に行きました。身体が硬直して、歪み始めています。もう、長くないのかもと感じ、何とも言えない悲しみが込み上げて来ました。
     母は私に「ありがと」と言ってくれたんですが、感謝の言葉をもらえるような事はなにもしていません。

     でも、美容院のお嬢さんは、お母さんが急逝したと仰っているから、亡くなるまであまり時間がなかったように推測されます。本当に一気に悲劇が襲ったんですよね。
     事態を認める時も与えられず、さぞや大変だったと思います。
     時間がある私でさえこの始末ですから。

     新しい店長さんを顧客の皆さんが応援してくださる事を望みます。
               長文、ご免なさい。

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  2. 彼女はお母さんが胸の苦しみを訴えた時、二人きりだったのだと言ってました。お父さんもお兄さんも仕事で出かけていたのです。
    彼女が救急車を呼び、病院二箇所断られて、一番遠い病院へ行く途中で一度お母さんの心臓が停まったんだそうです。
    蘇生措置でまた動き出した心臓ですが、病院は「酸素供給が止まった時間が長かったから、生き延びても植物状態になる。延命処置するか、ここで楽にさせてあげるか決めて下さい」と彼女に選択をゆだねたそうです。
    一人では決められない、残酷な選択です。
    駆けつけた家族と相談して、ずっと働きづめだったお母さんを解放してあげようかと、でも決められないうちに、お母さんは亡くなったそうです。
    彼女は家族が後悔することがないように逝ったお母さんに感謝しています。

    shizuさんは十分過ぎるほどお母さんに尽くしていますよ。
    素直にお母さんの言葉を受け入れることが、孝行です。

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