2021年6月9日水曜日

空の緑

 第1部の登場人物紹介


空の緑

 古代セルバの支配者と考えられている先住民種族。絶滅したと思われているが、実際は彼等が”地の緑”と呼ぶところの普通の先住民に混ざって生き延びている。先住民の間では「翼のある頭」を持つ神と信仰されている。大別して7つの部族があり、グラダ、ブーカ、オクターリャ、サスコシ、マスケゴ、カイナ、グワマナ に分かれる。部族毎に使える超能力が異なる。最も力が強いグラダ族は大神官とママコナと呼ばれる巫女を輩出していたが、混血が進み、大神官は絶えて久しく、巫女は残る6部族の持ち回りとなった。しかし未来を見る能力はグラダ族のママコナだけの能力なので、長老達は地球の将来を憂えて純血種のグラダ族を復活させようと地下で活動している。
 ”空の緑”の共通する超能力は、目と目を見合わせてテレパシー交換を行う「心話」、相手に幻影を見せる「幻視」、目を合わせた相手を操る「操心」、自身の心を飛ばして遠くを見る「離魂」、他人の思考を読み取る「読心」など。また、”地底の民”と”地表の民”のグループにも分けられ、”地底の民”は祭祀、政治を、”地表の民”は軍事を分担していたが、現代は不明瞭となっている。
”地底の民”はグラダを含む4部族からなり、超能力が強い。異次元空間通路を使うテレポーテイションや悪霊祓い、猫科の動物に変身する(「守護神を持つ」と言う)、時空を跳ぶ、などの能力を使う。
 ”空の緑”は成長するとある時期にママコナの「声」が聞こえるようになり、それに従って超能力を開花させるが、異人種の血が混じるとそれが困難になる。
 セルバ共和国の人口の約1パーセントは”空の緑”の遺伝子を持っていると言われているが、多くは普通の人間である。
 ”空の緑”としての自覚があるセルバ人は、普段は表向きのカトリックの信者として行動するが、実際は”空の緑”の道徳感と行動規範を遵守している。
 なお、”空の緑”は自身をツィンルと呼ぶ。「人」と言う意味である。
 大統領警護隊は”空の緑”の子孫のみで構成される軍隊で、国民からその徽章に因んで”緑の鳥”と呼ばれている。


シオドア・ハースト (テオドール・アルスト・ゴンザレス)

 アメリカ政府の秘密研究機関で遺伝子組み換えによって誕生した人間。頭脳明晰で運動神経も抜群、傷の治りも通常より早い。研究所で育てられ、我が儘いっぱいに成長したため、身勝手で他人への思いやりがなく、自分本位の考え方しか出来なかったが、セルバ共和国で巻き込まれたバス事故で記憶を失い、世話をしてくれたエル・ティティの町の住人達の心優しさに触れて、人間らしい優しい心を持った。 友情に厚く、世話好きで、勇敢な男に生まれ変わった彼は、恩人のゴンザレスと一緒に暮らしたいと願うようになり、セルバ共和国の市民になる為に悪戦苦闘することになる。
 彼の遺伝子は人工の組み合わせだが、”空の緑”のものとよく似ており、”空の緑”は彼の心を読めない。
 アメリカの研究所では超能力者を兵器利用する研究をしていた(らしい)が、記憶を失ってからは以前の研究に興味を失い、セルバ共和国に帰化してからは職業としてグラダ大学医学部で遺伝子学を教える講師、週末はエル・ティティに帰って代書屋をしている。


シータ・ケツァル・ミゲール

 セルバ共和国大統領警護隊文化保護担当部の指揮官を務める少佐。通常ケツァル少佐と呼ばれているが、ラ・パンテラ・ヴェルダ(緑の豹)の異名も持つ純血種の先住民美女。生まれてすぐに両親を亡くしたので、長老会の決定により、”空の緑”の血を引く農園主ミゲール夫妻に養女として育てられたお嬢様だが、成人してからは軍隊の給料だけで暮らしているので、かなりケチである。部下に大変厳しい上官だが、心の中では彼等を家族として大事に思っており、部下達から慕われ、頼られている。
 純血の最後のグラダ族だが、生まれた時期が先代のママコナ存命中だったので、ママコナになる資格はない。テレパシーでママコナと会話が出来る。ママコナより強い超能力を持っているが、巫女の権威を貶めることは絶対にしない。 性格は極めて”空の緑”的で、倫理観も祖先のままで、時々シオドアを呆れさせる。
 愛車はベンツだが、汚れそうな場所に行くときは軍の公用車を使う。


アルフォンソ・マルティネス(ロホ)

 セルバ共和国大統領警護隊文化保護担当部の中尉。ケツァル少佐の部下。 ”空の緑”の中で最も人口が多いブーカ族の純血の若者。実家は悪霊退治を生業としている家系。美しいジャガーに変身するが、消耗するので滅多に変身しない。性格は心優しく、穏やかで上品。シオドアと真っ先に仲良くなる。ケツァル少佐に憧れている。
 通勤にオートバイを使っていたが、カルロ・ステファンから中古のビートルを譲り受ける。


カルロ・ステファン

 セルバ共和国大統領警護隊文化保護担当部の中尉(後に大尉)、後に本隊に帰属。ケツァル少佐の部下で、ロホの同期。カトリックの家庭で育った混血のグラダ族なので、ママコナの「声」を聞けず、超能力の使い方を学習していなかったが、能力に目覚めると黒いジャガーに変身した。大神官を表すエル・ジャガー・ネグロと呼ばれるが、本人に大神官になるつもりはない。人懐っこく、陽気だが、少佐には頭が上がらない。ヘビースモーカーで、少佐に遠慮してタバコを吸っている。気のコントロールが下手で放出しっぱなしなので、虫や蛇が寄り付かず、仲間から虫除けに重宝されている。
 純血のグラダ族だった父の一人息子で、父親の死後極貧生活を体験している。グラダの血を引く母親と妹に仕送りをしている。


キナ・クワコ(アスル)

 セルバ共和国大統領警護隊文化保護担当部の少尉。ケツァル少佐の部下。”空の緑”で最も人口が少ないオクターリャ族の純血の若者。彼の生まれ故郷は異次元の狭間にある。彼は過去には跳べるが未来へ行くことは許されていない。負けん気が強く、ケツァル少佐に気があるシオドアに対して意地悪く振る舞うが、悪意はない。先輩のロホとカルロが悪い女に引っかからないよう、いつも目を光らせている。意外に料理が上手。軍隊内でサッカーチームを率いている。


マハルダ・デネロス

 セルバ共和国大統領警護隊文化保護担当部の少尉。ケツァル少佐の部下。混血のブーカ族。部内では一番若く、通信制の大学で学ぶ大学生でもある。ケツァル少佐から妹の様に可愛がられている。陽気で大胆な性格なので、時々超能力を使って失敗もする。男の上官達を兄の様に慕っているが、アスルは年上でも同輩扱い。シオドアにも懐いている。


エステベス大佐

 セルバ共和国大統領警護隊、通称”緑の鳥”の司令官。名前だけで、絶対に本人は物語の中に登場しない。”空の緑”の軍隊である”緑の鳥”の隊員達の教育を担っている。部族は不詳。


アントニオ・ゴンザレス

 エル・ティティの警察署長。 妻子を病気で亡くし、一人ぼっちだった彼は、記憶喪失のシオドアを引き取り、世話をするうちに、シオドアを天からの贈り物の様に感じ、息子の様に愛する様になる。後に正式に養子縁組する。
 真面目で仕事熱心な警察官。普通の人間である。


アリアナ・オズボーン

 シオドアと同じ研究所で生まれた遺伝子組み替え人間。遺伝病の研究者として働いている。記憶を失う前のシオドアは嫌いだったが、他に男性を知らないので成人すると彼と男女の関係になった。記憶を失ったシオドアの人格が変わったことに戸惑いながらも愛情を抱く様になる。しかし、偶然カルロ・ステファンを助けることになり、初恋を体験すると、強引に彼と関係を持ってしまう。シオドアと共にセルバ共和国に亡命するが、カルロへの思慕に苦しみ、結局アメリカに帰国する。


エルネスト・ゲイル

 シオドアとアリアナと同じ研究所で生まれた遺伝子組み替え人間。自分より優れたシオドアに嫉妬し、アリアナに相手にされないことを恨んでいる。カルロ・ステファンを証拠もなくジャガー人間だと信じて生け捕り、シオドアも幽閉しようとするが、ケツァル少佐の超能力で取り返されてしまう。


フェルナンド・ファン・ミゲール

 セルバ共和国の大農園主。駐米大使。超能力はないが、ママコナの声は感じ取れるので、”空の緑”の子孫としての自覚はある。長老会の要請を受けて、親を失ったシータ・ケツァルを養女に迎えて育てた。富豪だが娘を甘やかすことはしないで自立させている。妻はスペイン人で、夫や娘が古代先住民の子孫であることを知らない。シオドアやケツァル少佐が危機に陥りそうになると援助の手を差し伸べる。


ファルゴ・デ・ムリリョ

 セルバ共和国のグラダ大学人類学部の教授で国立民族博物館館長。裏の顔は、”空の緑”の秘密を守る為に暗躍する殺し屋集団”砂の民”の長老。純血主義で混血の”空の緑”の存在を厭う男だが、害がなければ何もしない。カルロ・ステファンを渋々ながらも”エル・ジャガー・ネグロ”と認めている。白人のシオドアも”空の緑”の秘密を守る味方と認め、彼に民族の秘密を打ち明ける。多忙なので、なかなか捕まらない。




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