2010年5月28日金曜日

サンドールの野を愛す・クリスマス



 キリストより先に生まれた人間には、キリストの誕生日を2千年たった後の時代のベツレヘムから遠く離れた土地で祝っているのが可笑しく思えた。だけど、この日は離れていた家族が集まって絆を確認したり、友達と友情を温め合う日なのだ、と考えたら、大切な行事なのだろう。
 トワニはサンドールと言う街が出来てからクリスマスを一人で過ごしたことがない。毎年誰かが食事に招待してくれたからだし、彼等が本当に彼に来て欲しがっていることがわかったから。だけど、体は一つだけなのだから、みんなの家を全部訪問することは無理で、それで住人は集会所で町全体のクリスマスパーティーを開いて彼と新年を祝う習慣を作った。
 トワニ個人が自宅でクリスマスを祝ったのは、捨て子を拾って育てていた時と、ジェイクが同居することになってからのことだ。
 今年は、いつもより少し賑やかだった。アリーが加わったから。彼女もキリストより早く生まれ、キリストより早く死んでいたので、クリスマスと言う物を教えなければならなかった。アリーは、多分、本当に理解した訳ではなかっただろうが、スーズィの指導でプレゼントを買ってきた。暖かい手袋を男二人に。彼女の趣味じゃないとわかったが、トワニは有り難く受け取った。これは最初のプレゼントと言うより、練習だ。
 トワニは彼女にナイフを、ジェイクにワープロを贈った。高価な贈り物にジェイクは驚きを隠せなかった。トワニは小説家として第二の人生を歩き始めた友に言った。
「我が家の稼ぎ頭に、もっと書いてもらいたいからね」
 ジェイクは照れ笑いをしてから、ちょっと躊躇って自分のプレゼントを出した。
「俺のは、金がかかっていないんだ。生活の役にも立たないんだよ」
 それは、原稿だった。ジェイクが日々書きためていた詩集だった。トワニは胸がいっぱいになった。
「君は、俺に心をくれるんだね」
 彼は不覚にも涙をこぼした。アリーが不思議そうに尋ねた。
「何故泣いている?」
「嬉しいからだよ」
 トワニは立ち上がって、坐っているジェイクを抱き締めた。
「有り難う、ジェイク。 これで、俺はこの先もずっと君と一緒にいられるんだ。」
 ジェイクも、気が遠くなる程長い時間を生きている友人を抱き締め返した。
「そう言ってもらえると、俺も嬉しいよ。ここからいなくなっても、俺はあんたと一緒にいられるんだね。」

 人はいなくなっても、心が込められた言葉は残る。

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