そのお店は「ヤマメ茶屋」と言いました。
国道から自動車1台分の狭い道を1分ほど行くと、茅葺きの古民家・・・にしてはちょっと変わった家。
庭先が駐車場らしく既に先客が1台。
家の前には川が流れていて、石伝いに店に入ります。
川は店の床下にも流れています。反対側から出て滝になって池に落ちています。
ちょっと変わっているでしょう?
川の上に建っているのではなくて、川を家の下に通しているのですけど。
勿論人工の川ですが、水源はすぐ庭先を流れている本物の川の水です。
ガラガラと引き戸を開けると、土間をはさんで右に小さいコタツの部屋、左は広い大広間で、囲炉裏に火が焚かれ、男性が一人座っていました。
「こんにちは」
とその年輩の男性。
「寒いでしょう。こちらに上がって火にあたってください。私も客なんですけどね。」
店の暖房はコタツ(三カ所あり)と囲炉裏だけでした。
寡黙な割烹着姿のおじさんが一人で店を切り盛りしているみたいで、黒板に書かれているメニューの半分はヤマメがシーズンオフで出来ないとのこと、とその囲炉裏端の人が教えてくれました。
お店のおじさんは、こっちから話しかけない限り注文を取らないみたいなので、家人が「山菜定食2人前」と注文。
おじさんは庭に出て、何か植物を摘んで厨房へ・・・
囲炉裏端に座り、先客の男性とお互いに午前中行ってきた場所とかを話していました。男性の奥さんが外から戻って来られ、お二人は土間の向こうのコタツへ移動。囲炉裏の煙と灰が舞い上がるのを奥さんが嫌ったのです。(笑
煙たいので窓を開けたり閉めたり・・・
家の中は部屋の仕切りなどなく、一つの大きな空間で、煤だらけです。
煤にまみれた酒瓶、タヌキの剥製、野外活動関係の本、漫画、こけし、瓢箪・・・古いのか新しいのかわからない煤まみれのお店。
床は熊の皮が敷き詰めてあります。
変なお店に入っちゃったなぁ・・・
御飯はおくどさん(竈)でお釜で炊くみたいです。
スローフード、注文してから40分後に、やっと料理が運ばれて来ました。
巨大な切り株のテーブルもありましたが、灰だらけだったので、隅っこのコタツに移動。
「山菜定食」は、茸や葉っぱ、ゴボウの天麩羅が山盛りのお椀、はちく竹やゼンマイ、茸の酢味噌和え、茸(なんだかわからん)の甘辛煮、蕗の佃煮、自家製らしい柚子大根、なんだかわからん山菜がいっぱいのお味噌汁、御飯。
見事に山菜だけ、肉類魚類はいっさいありません。
料理も京都で出される山菜御膳みたいな手の込んだものではありません。
山小屋料理です。
そう、このヤマメ茶屋は、兵庫県の最高峰、氷ノ山登山の受付をしている山小屋だったのです。
それしても、土間のそばのコタツの上に食べかけのうどんと食べかけの鯖寿司がありました。おじさん、きっと「今日は客は来ない」と油断してお昼を食べていたところを私たち4人に妨害されたみたいです(笑
お庭には、冬枯れの大樹の下に本物のボンネットバスが、お役目を終えてぽつんと置かれていました。最近まで路線バスとして走っていたみたいです。
続く
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