2011年1月10日月曜日

世界遺産と京の御飯

昨日はお天気になると思って、京都へお出かけ。
でもお天気はずっと薄曇り。

まず大津へ。以前見かけた気になる鰻屋さんへ。かなり有名なお店らしい。
「かねよ」さん。 本店はちょっと高いので、レストラン部門へ。
お食事の内容は、もう一つのブログ「フードコート」でどうぞ。

御飯の後、どこへ行こうかと散々二人で悩んで、まず下鴨神社へ行くことに。
1号線、いつもながら大渋滞。
途中「出町ふたば」の豆大福を、と前を通るとお客さんの行列が三つ折り四つ折り・・・
止めよう(汗
下鴨神社は、正しくは加茂御祖神社(かものみおやじんじゃ)と言います。
残念なことに祭礼場所が改築中でシートを被っていて、美しい本殿が見えず。
拝殿のガラス越しは駄目ですね。
代わりに楼門を・・・
屋根の上の雪あら雨の様に雫が落ちて下を通るときは注意が必要。





大きな舞殿。参拝者の数も凄いです。流石に世界遺産。流石に下鴨神社。


お参りの後で、資料公開を見ます。
重要文化財「大炊殿」です。竈とか馬車とか牛車とか展示してます。
私的には、水の神様が降臨なさる「水ごしらえ」が興味があります。
井戸の前にある平たい大岩です。


さて、神社にお参りの後は、世界遺産 糺の森 を歩きましょうか。

2011年1月1日土曜日

サンドールの野を愛す・雪の夜


あの時代、あの国は混乱して、貧しかった。空に太陽が輝く夏でさえ暗黒のイメージがあったから、日が短い冬などは、もう闇の世界だった。餓死者も大量に出た。伝染病が広まらなかったのは冬だったからだ。それでも、インフルエンザくらいは流行っていただろう。
俺も貧しかった。土地を持たなかったし、身元を保証されている訳でもないから、その日暮らしで、周りの人々が貧しければ、俺の様な放浪者が真っ先にいかれちまうのさ。
あの夜、俺はなんとかその日稼いだ銅貨2枚を後生大事に持って、雪の中を歩いていた。遅い時間だったので、パン屋は閉まっていて、食い物にありつけるのは、翌日まで待たなきゃならなかった。正直、生きてその夜を越せるかどうか、自信がなかった。
風が吹き始めて、吹雪になるかも知れないと思い始めた時、暗がりの中から女が一人現れた。村の居酒屋で働いている娘だった。口を利いたことがなかったので、お互い会釈だけしてすれ違おうとした。彼女が足を止めて、話しかけてきたんだ。
「唇から血が出てるよ、兄さん」
食う物を食ってないから、健康だとは言えなかったんだ、あの頃は。唇も乾燥して荒れ放題。カサカサで切れていたんだな。寒さで気付かなかったんだ。
彼女はすっと俺に近づいてきた。俺は言葉を返すのも億劫で、彼女がどんどん顔を近づけ来るのをぼんやり見ているだけだった。
「生きるのも辛そうな顔だね。私が勇気づけてあげようか」
彼女はそう言って、俺の唇にキスをした。正確に言えば、キスするふりをして、俺の唇の血を舌で舐めたんだ。
彼女はすぐに身を退いた。ちょっと驚いていた様だ。
「あんたが、あのメトセラの・・・」
って言ったと思う。そして、舐めた俺の血を吐き捨てた。
「とんでもないのに出会っちまった。行っちまいな、ここはあんたがいる場所じゃないよ。」
俺は腹ぺこで、もう旅を続ける気力もないと答えた。すると彼女は近くの林を指さした。
「さっき、あそこでウサギを仕留めた。まだ雪に埋もれていないから、見つけられるだろ。それを食って、ここから去るがいい。」
そして雪の中を歩き去った。俺は言われた林に行き、そこでウサギの死骸を見つけた。綺麗に血抜きされていたので、小屋に持ち帰って火で炙って食べた。お陰でなんとか持ちこたえて、その国を出た。

それ以来、そこには戻らなかったし、彼女にも会っていない。
人々は彼女や彼女の一族を吸血鬼と呼ぶが、俺には恩人かも知れない。

-----ジェイク・スターマン著「トワニに聞いた物語」より

サンドールの野を愛す・ライナス

アメリカ全土が不況で喘いでいた時代。サンドールの集会所の入り口で捨て子が見つかった。生まれて一月足らずの男の子。警察は親を捜したが、見つからな かった。サンドールは小さな町だから、子供がいなくなれば、すぐ近所の人が気付くだろう。これはきっと近隣の町か村の人間が夜中にやって来て棄てていった に違いない。寒くないように毛布でくるまれていたから、親は子供が死ぬことを望んでおらず、どこかの親切な人に拾われることを期待したのだろう。仕方がな いので、警察は子供を隣町の孤児院に預けることに決めた。すると、子供を最初に発見した人物が、自分が育てようと申し出た。サンドールの住人は驚いた。彼 が孤児を養うなんて予想していなかったから。でも、彼は言った、「この子の親は、子供がサンドールで生きていくことを選択したんだ」
ライナスと名付けられた赤ん坊は、こうしてトワニの小屋で育てられた。トワニはその日暮らしだったけれど、子供の養育費には困らなかった。サンドールの 住人たちが、子供に必要な食べ物や身の回りの物を分けてくれたからだ。サンドールの住人たちは、自分たちも不況で喘いでいた。それぞれの家庭は、子供が一 人増えるのは辛いが、余所の家の子供に少し分け与える余裕くらいはあった訳だ。その「余所の家」がトワニの家なら、なおさらだった。
ライナスは町中の人々によって育てられ、成長して、当時の若者がそうだった様に徴兵されて戦争にも行き、無事に退役して町に戻って来るとジョーンズ牧場 で働き始めた。牧場主が彼を気に入って娘と結婚させ、彼はライナス・ジョーンズと言う名前になり、その後も真面目に働き、子供が出来て、牧場は町で一番大 きな牧場となり、彼は町の名士に数えられるようになった。

「5人目の曾孫が生まれたんだよ、親父」
と、ライナスは、一番年長の曾孫と変わらない外観の若さを保つトワニに報告した。二人は馬に乗って牧場を見下ろせる丘の上にいた。
「どっちだい?」
「男。息子、孫に曾孫、全部男だ。」
「ジョーンズ家は代々女系だったが、おまえが入り婿してから逆転したな。」
「まだ3代しかたっていないよ。」
「いや、4代さ。おまえから数えるんだ。」
「俺は余所者の子だ」
「違うね」
トワニは断言した。
「おまえの親は、この町の住人がおまえを育てると知っていたんだ。」
「住人が俺を育ててくれたのは、俺が親父に引き取られたからだろ?」
「それを予想出来たと言うことは、おまえの親が俺の存在を知っていたと言うことだ。つまり、おまえの親は、サンドールで生まれ育って外へ出ていった人間だ。」
「親父は俺の本当の親が誰だか知ってるのか?」
「知らない。もし知っていたら、おまえは知りたいのか?」
ライナスは草原の果てに視線を向けた。
「いや。俺の親は親父一人だけだから。」
「だったら・・・」
トワニは馬の首を軽く叩いた。馬が草を噛むのを止めて、次の指示を待つように顔を上げた。
「おまえは余所者じゃないさ、ライナス。80にもなって、そんなことも知らなかったのか?、坊や」
トワニの馬が腹を蹴られて走り出した。やれやれ、とライナスは首を振った。いつまでたっても子供扱いするんだから・・・。彼も馬の腹を蹴ってトワニを追いかけた。
「そんなに飛ばすんじゃないぞ、親父、あんたも歳なんだから!」

明けましておめでとうございます。

A Happy New Year ! 

2010年12月20日月曜日

2010年12月17日金曜日

サンドールの野を愛す・お告げ

 水晶で占いをしている。 と言っても、水晶の中に何かが見える訳ではなくて、自分の頭の中にヴィジョンが浮かぶのだけど、それだけだと、誰も信用してく れないので、水晶玉をクッションの上に置いて、薄暗い部屋でお香なんぞ焚きながら、意味不明の呪文を唱えて、見えるふりをする。
一応、当たってるんだ。いや、よく当たるんだよ。だけどさ、はっきり全部言うと、みんな怖がるだろ?
おいらの占いはさ、本当にこれから起きることが見えちゃうから、絶対当たる。それが、良いことだったら、かまわない。だけど、不幸だったら、当たった時、何故か逆恨みされたりする。おいらのせいじゃないってのに。
だから、良くも悪くも、ちょっとぼかした言い方でお告げをするんだ。「3時間後にあなたは車に轢かれます」なんて、言えないじゃん。
「帰り道に、四つ角で車に気を付けなさいね」としか言わないのさ。
困った客は、何人もいたけど、一番変わってたのは、三日前に来た若い男でね・・・若く見えるんだけど・・・20歳くらいかな・・・だけど、老人の雰囲気がしたのよ。
その男が占ってくれって言うんだ。「俺はいつまで生きなきゃいけないのか?」って。
変なこと訊くだろ? 普通は「いつまで生きられるのか?」て訊くもんだぜ。
それで、いつも通りの手はずで、ヴィジョンを呼び出してみようとしたら、何も見えない。
いや、見えたんだが、それが何を意味するのか、おいらには、全く見当が付かないんだ。
その男の未来? 未来なのかなぁ・・・。
青だか緑だかわからない、陸地なのか、海の上なのか、それもわからない広い広い平原みたいなものが見えた。波打っていたのは水だろうか、草だろうか?
そこに白い道が見えた。真っ直ぐじゃなくて、緩やかに蛇行して、そのまま地平線(水平線)の向こう、光の中に消えていくんだ。
答えられなかったけど、答えを求められてた。おいらは仕方なく、その男に言ったよ。 彼はがっくりきていたけどね。
え? 何を言ったかって? 
おいらは、あの男にこう言ったのさ。

あんたの未来は永遠です。

サンドールの野を愛す・マイケル

 マイケル・M・マトリーは、生まれたときから、ころころ太っていた。小学校に上がる頃には、文字通りマトリーの犬(和名・ケンケン)みたいな体型だっ た。太ってしまうと、子供はあまり動かなくなる。動かなければ、また太る。友達にからかわれる。遊ぶのも面倒になる。更に動かない。マイケルは自分でも嫌 になっていたが、ただ太るだけだった。
マイケルには、ささやかな趣味があった。学校からの帰り道、地面に残った動物の足跡を辿ってみることだ。それが鹿だったり、ウサギだったり、牛や馬、 犬、時にはコヨーテだったり、と足跡には不自由しなかった。寄り道している動物、立ち止まっている所、水場、何かに驚いて飛び跳ねた痕、これは遊んでいた 跡、と彼はいろいろと分析もしてみた。
それは野原の中の一人遊びだったので、友達も親もマイケルが追跡ごっこをしていることを知らなかった。
雑貨屋のゴールドスタインの孫娘が行方不明になった時、警察は5歳の女の子を捜しあぐねた。考えつく所、小川や納屋や牛小屋や学校や・・・ありとあらゆ る場所を捜索したが、少女は見つからず、明日は犬を使おう、と話し合っているところに、トワニが来て、「子供を捜すには、子供に聞くのが一番さ」と言っ た。どの子供だ、と保安官が尋ねると、彼は捜索隊の一人を指さした。
「あんたの息子だよ、ジョン・M・マトリー」
なんだかわからぬまま、大人達はジョンの家に行き、マイケルにゴールドスタインの孫娘の居場所を知っているか、と尋ねた。勿論、マイケルは知らなかったし、少女の足跡なんか何処にもなかった。
だけど、マイケルは思い当たるところがあった。
「お店の屋根裏を誰か覗いたの?」
雑貨屋の店舗の屋根裏部屋は倉庫になっていて、普段は入り口に鍵が掛かっていた。しかし、二日前、その鍵が壊れて梯子を昇って行った所の扉が半開きになっているのを、何人かの客が目撃していた。
「屋根裏にいたら、すぐに降りてくるだろう」
と言いつつも、ゴールドスタインは、そこを探さなかったことを認め、梯子を昇って行った。
少女は隅に置かれていた古いトランクの中に入り込み、出られなくなっていたのを発見された。危ういところだった。
後に、何故屋根裏に少女がいるとわかったのか、と訊かれてマイケルは、梯子の中段に少女の服のレースが千切れて引っ掛かっていたのを見たのだと言った。大人達は彼の観察力に感心した。

*  *  *

「保安官、ハーパーさんから電話がありました。また鶏泥棒が現れたそうです。今度は足跡が残っているそうですよ。」
「その足跡はキツネだって言ってなかったか?」
「多分キツネだろう、て言ってました。巣穴まで追跡したいので、保安官にも手伝って欲しいって。」
「どうして、キツネごときに、警察が出動しなきゃいけないんだ?」
「だって、他にお仕事、ないじゃありませんか」
秘書の皮肉に、肩を竦め、マイケル・M・マトリー保安官は重い腰を上げた。
キツネの鶏泥棒逮捕では、減量作戦にもならない、と思いつつ・・・。
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