父の遺産相続の為に姉妹が集まった。
長女の桃子。父と性格が似て頑固なので、父の晩年は対立して電話すらしなかった。勿論、父が病に倒れてからも見舞いにも来なかった。
次女の梨花。体が弱く、それを理由に近所に住んでいるにもかかわらず、一度も父の看病の手伝いに来なかった。今も神経性の胃炎で悩んでいると愚痴をこぼしている。
三女の栗子。海外赴任の夫と共に帰国したのは、父の49日の直前、つまり昨日。葬式に間に合わなかったのは許すとして、どうして遺産がもらえるかも知れない時に帰ってくるの? もっと早く帰って来られたでしょ?
四女の杏。一番父に可愛がられていたので、自信満々の表情だけど、ダンナの会社は火の車。内心はきっと穏やかじゃないわね。全額もらえる訳はないしね。
五女は、花梨、つまり、私。末っ子だけど、家に残って一人で父の世話をした。葬式の手配もしたし、桃子姉に言われて喪主も務めた。これでみんなと同額じゃ、割に合わないわ。
弁護士が封筒を開封するのを、全員が固唾を飲んで見守った。
白い便箋を手にして、弁護士が読み上げた。
「娘たちの健康で豊かな人生を願って、ここに全ての遺産を以下の者に贈ることにする。
次女 梨花」
そんな馬鹿な!!
私たち姉妹の叫びを無視して、弁護士は次女梨花に小さな手提げ金庫を渡した。株券とか土地の権利書なら十分入る大きさだ。
梨花は得意満面で、金庫を開いた。彼女の顔色が変わった。
「何よ! これは?!」
梨花姉がテーブルの上に投げ出した金庫を覗いて、私たちは唖然とした。
そこには、金色に光る粉が入ったガラス瓶と一通の覚え書き・・・
毎食後半時間以内に必ず服用のこと
胃散だった。
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