あの文化人類学の教授が研究費を着服している疑いがある。だが、真面目で研究一筋の男が何に金を使ったのか、わからないので、手がかりを調べて欲しい。大学側としては、事を表沙汰にしたくないので、出来るだけ穏便に解決出来る手段を考える資料として、調査結果を期待している。
そんなことを言われて依頼を受けたのが、四日前。ずっとあの先生を尾行しているが、なんにもない。
家と学校を往復するだけ。学校じゃ、講義に出る以外は研究室か図書館に籠もって本を読みあさっている。
浮気も賭け事も何にもしてない。まぁ、四日だけじゃ、なんとも言えないがね。しかし、退屈だし、報告書にも書くことがない。
困ったことに、いつも乗るバスってのが、ローカル線の極みで、乗客のメンツが全く同じ。
違うのは、今日は若い男が一人、発車間際に乗ってきたこと。しかも、そいつ、前の席の女ばかり見ている。 あれ、ストーカーじゃないのか?
それに女も・・・毎朝毎夕見かける顔だが、教授の方をチラチラとよく見ている。
学生か? それにしては、教授は知らん顔だが・・・。
まさか、あの女が、貢がれている愛人ってことじゃ・・・。
そんなことを思っている間に、もう停留所だ。 教授はここで降りる。俺も近所のアパートに帰るふりをして降りる。あのアパートは住人の出入りが激しくて、怪しまれないんだ。 なにしろ、ローカルだからな、人数が少ないので、つきまとうと目立つんだ。
教授は降りる気配だ。 ん? 女も? やはり、逢い引きか?
おーおー、ストーカー君も身構えている。俺も・・・。
おや? 後ろのベンツ、さっきからこのバスの後ろをぴったりと・・・追い越しもしないで付いてくる・・・。
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